高校野球とスーダラ節


 高校野球とスーダラ節
♪♪ちょっと一杯のつもりで呑んでいつの間にやらはしご酒、気がつきゃ公
園のベンチでごろ寝、これで身体にいいわけないよ、わかっちゃいるけど止
められない♪♪
今から40年前、植木等とクレージーキャッツのヒットソング『スーダラ節』で
ある。植木等の父親は寺の住職で「わかっちゃいるけどやめられない」こそ
が人間の本質、「煩悩」だと言ったそうです。「テレビゲームばかりしていて
はダメ」「肉や饅頭ばかり食べていてはダメ」「テレビばかり見ていてはダメ」
「仕事もテキトウばかりではダメ」「ギャンブルばかりしててはダメ」だけど
「わかっちゃいるけどやめられない」
そう言えば宗教のラジオ番組でも人間は元来楽になる方向に行きたがると
言っていた。
一方、夏の高校野球は、なぜ灼熱地獄の甲子園でやるのだろう。そんなこ
とはやめて空調の効いた大阪ドームでやったらという意見もあるらしい。し
かし、これには反対が多い。いわく、甲子園の限界の暑さの中でやるから
夏の大会であり、意義があるのだと言う。暑さでぶっ倒れそうな中、選手も
応援も報道さえも限界を感じながらでないと甲子園ではないらしい。そんな
中で勝っても負けてもやり抜くのがいいのだと言う。これも「わかっちゃいる
けどやめられない」のうちかもしれない。
さて、友人の勤める24時間営業のコンビニでは、客数の少ない夜間に入
荷が多い。特に数の多い物、大きい物、重い物は夜間に集中する。私の友
人は60歳過ぎだが、夜間専門である。毎日午後9時すぎには出勤し、10
時からの仕事に備えるという人間である。彼の頭には時間ギリギリの出社
などあり得ないのである。夜間の荷物は午後9時過ぎから入荷しだす。す
ると若いアルバイトは入荷した商品をそのままにして「もうすぐ○○さんが
来るから」と手をつけないと言う。下手をすると荷物をそのままにして帰って
しまうアルバイトもいる。確かにそのほうが楽なのだ。9時過ぎに出社した
彼は残ったバイトに声をかけながら仕事に取り掛かる。「会社から給料をも
らっているのでない。お客様からお給料をもらっているのだ」「その客を迎え
るのに商品が出ていなくてどうする。ごみが片付いていなくてどうする!!」
彼には、何のために仕事をするか解っているし、その仕事をしたという達成
感があるのだろう。私は決して彼のように出来ないが、「楽して儲けるスタイ
ル」は性に合わない。
しかし、現代は、楽して生きるスタイルが主流のようだ。それは、人生、時
間を大切に生きているということだろうか?楽して生きることが達成感なの
か?私には解らない。こんなことを考えるのも無駄かもしれないが、「わか
っちゃいるけどやめられない」だ。