テレビと話す。



テレビと話す。
ラジオが「ここに花がある」というだけでは、どんな花がどんな風に
あるのかがはっきりはしないので、ラジオを聞く方は自分なりに想
像することになるので頭を活性化すると言う。それに比べテレビは
映像があるので、想像する手間が省けるが、その分頭を使わない
ので「頭が悪くなる」と言う話がある。それにテレビを見ながら何か
をすることは難しいので、ラジオはその面でも重宝されているよう
だ。
さて永六輔さんが、小沢昭一さんの言葉をラジオで紹介していた。
小沢さんは、年寄りで一人暮らしの人はテレビと話をしなさいといっ
たと言う。
年寄りの家に訪問者は少ない、まして独居となると一人でいると音
や言葉のない時間がやたら多くなってしまう。この誰ともコミニケー
ションのない時間がボケを加速すると言うのだ。
人間誰でも、使わない所は衰弱してしまうから頭も使わなければボ
ケるに違いない。だからと言って今流行の頭の体操をしてくれるゲ
ーム機を高齢者に勧めるわけにはいかない。だいたいボタンも液
晶画面も操作出来ないのか年寄りだ。
では、ラジオはどうか?ボケ防止のためには、まずラジオがいいと
の話は聞くが、利用者さんでラジオをいつも聞いているという人を私
は知らない。
昔のNHKラジオと違い、今のラジオは早口で解りにくく聞き流してし
まうからいやなのかよく解らない。
年よりはもっぱらなぜかテレビである。しかし、テレビを見るとしゃべ
らなくなるのが常識だ。利用者さんの多くが訪問時もテレビを無言
で見ていることが多くある。ただ呆然とみている場合が多いような気
がする。別に楽しそうでもなく、番組を選んでいるようにもみえない。
そこで、わたしはサービスの合間にテレビを見ている利用者さんの
横に座りテレビに合いの手を入れるようにしている。ほんの数分で
もそのときは利用者さんが反応する。「こんな事件ばっかりだね。」
「これ食べたことあるよ」「この俳優誰だっけ」認知症の利用者さん
の場合は特に心がけるようにしている。時にはあまり喋らない利用
者さんが「この人嫌い」とか「釣、やってみたい」と言葉を出してくれ
ることがある。
ともすると、私たちホームヘルパーの利用者さんとの会話は、サー
ビスのことが中心で他の話題を出すことが少なくなる。こんな時は、
テレビを交えて話すのは都合が良い。
人間は言葉を獲得した社会的動物なので、しゃべることが一番手
軽な脳の活性化と言う話もあるのだがどうだろう。
我々ホームヘルパーに、専門的なリハビリは出来ない。しかし、日
常生活を当たり前にすごす中で獲得できることはたくさんあると思
う。