酒と高齢者1(スーパー銭湯にて)



酒と高齢者1(スーパー銭湯にて)
私は、仕事帰りによくスーパー銭湯に行く。そして様々な光景に遭遇にす
る。前に書いた湯船に小便をしていた事件もその一つである。今度は湯
船から洗い場に首を突き出してゲロを吐いている若者にでくわした。
私がスーパー銭湯に行くのは、大体が昼間である。その若者は昼間から
酒を飲んでいたのだろう。幸い若者のゲロは湯船には入っていなかった
ので、大事には至らなかった。私も何年か前までは、大した酒飲みで、結
局体を壊したので大きなことは言えないが、平日の昼間から酒を飲んで
いるようではこの若者の将来が心配される。
さて、私達ホームヘルパーにサービスを依頼する利用者さんの中にも、
以前から酒の問題を抱えている人が結構いる。同業の話などを総合して
みると大体は60歳くらいまでは結構沢山飲んでいたが高齢になって飲め
なくなったと言う利用者さんが多い。しかし、要介護となってからも酒が手
放せない例もあり、深刻である。
大量で長期間の飲酒生活は、肝臓などの身体だけでなく脳にも悪影響を
及ぼす。回復しがたい記憶喪失とか精神の異常を、酒をやめた後も残る
のだ。歳を取れば認知症とはいかなくとも、記憶力等の低下は必然だ。
その上に、アルコールの悪影響が重なったのでは深刻な事態といえる。
昔、酒は結構高価なものだったと記憶している。戦後は粗悪で安価なア
ルコールが出回って、アルコール依存症が多発した。それが姿を消した
後は、日本酒にしてもビールにしても高価なもので毎日晩酌が出来る家
庭は少なかったので、依存症も少しは減った。しかし、酒などにトウモロコ
シなどの雑穀が原料の醸造用アルコールが混ぜられるようになってから
は、酒等は安価な物になって依存症は増え続けている。正月とか祝い事
にしか飲まれなかったアルコールが、毎日の生活に浸入してアルコール
依存症は身近な問題になったのだ。
アルコールも、解っちゃいるけど止められない物の一つだ。休肝日の必
要性は解っていても、意識だけでは止められない現実がある。その理由
は、アルコールはモルヒネにつぐ依存性の高い薬物であることにある。飲
み続けると、意識だけでなく身体自体がアルコールを欲しがるようになっ
てしまうと言う訳だ。
近年、飲酒運転の罰則が強化されたが、まだまだ飲酒運転撲滅とはい
かない。アルコールが依存性の非常に高い薬物であることを考えた上で
の対策を立てないで、罰則だけを強化したのでは撲滅は難しいだろう。
スーパー銭湯でゲロを吐く若者を見て、困ると同時に昔の自分自身に出
会ったような気がした。