お葬式とあちらの世界 @

 

お葬式とあちらの世界 @

 人間は、誰でも死を迎えます。それは当たり前のことなのですが、普段
はそれを忘れて現実の世界で生きていくのが精一杯の私です。
「死ぬ」と言えば、お葬式です。お葬式には、生前どんなに仲たがいして
いたとしても、参列しようと思うなら参列して良いという話があります。現
実社会では意見とかが合わないで、罵倒し合っていた仲でも、あの世に
逝ってしまうとなれば、見送りを断る理由は無いということです。
介護という社会に入って5年、私は関わりのあった利用者さんが亡くな
り、お葬式があると聞けば、参列するようにしています。しかし、介護業界
一般ではあまり利用者さんのお葬式には参列しないというのが通例のよ
うです。介護とは違いますが、以前私が医療の業界に居たときは、病院
側からは「お葬式には行かないように。」というお達しがあったから、それ
に準じた風習かもしれません。その時は、病院という職場は職業柄、死
に接することが多いから毎回葬式に出掛けていては、限りが無いからか
なと、軽く考えていました。
 しかし、この業界に入って考えが変わっていきました。少なくとも、介護
ということは病気と闘っている医療とは違い、生活を支える仕事です。だ
から当然、利用者さんとの付き合いは長く、また頻繁になります。そして
何より、未熟な私に介護術を含めて様々なこと、人生のことを教えてくれ
た利用者さんのお葬式に参列しなくて良いかということです。
だから私は、ご霊前でお礼を述べることにしています。上手く体位変換出
来ない私に「痛い。」と注意してくださった利用者さんに、「今度からもっと
ちゃんとやります。」と誓って、帰ります。
介護という仕事は、人を相手にする仕事です。中でもホームヘルパー
は、一人一人異なる利用者さんの生活を支え、人生に直接関わる仕事
です。利用者さん一人一人の生活や人生に関わるなかで、私たちホーム
ヘルパーは、真の意味で育っていくのだと思っています。
だから、利用者さんこそ本当の意味での先生だと思い、今後もお葬式や
お通夜には参列させていただきたいと思っています。御礼を言うのはこ
ちらの方ですから。