障害者自立支援法廃止

障害者自立支援法廃止
政権が変り、障害者自立支援法の廃止が決まった。障害者当事
者の生存権を問う裁判が全国で行なわれていたこともあり、私は
良かったと思った。障害者自立支援法は2005年に成立し、200
6年に施行され、介護保険制度の改正とセットで行なわれた。当社
のような訪問介護事業所は介護保険利用者さんの介護に加え、
障害者自立支援法の介護も出来ることになったが、それを申請す
る者と申請しない者に分かれた。
介護保険制度改正では、訪問介護の生活援助は一時間半が限
度となり、介護予防の考え方が導入されて、特に生活援助関連の
仕事が減った。だから、この地区でも多くの生活援助中心の同業
者が廃業や縮小に追い込まれた。残った同業者のほとんどが、障
害者自立支援法の仕事が出来るように申請し、介護保険の売上
のマイナス分をその売上でカバーしてきた。それどころか、売上の
50パーセント以上を障害者自立支援法に頼っている所も少なくな
い。だが、高齢者と障害者は同じ介護と言っても、大きくは年齢が
違うから、介護内容も話し方も介護の目的も違ってくる。その中で
苦労した同業者の話もよく聞いた。当社は、障害者自立支援法の
仕事を引き受ける自信がなかったから、少なくなる介護保険の仕
事だが、介護予防も含め介護保険だけでなんとかしのいで来た。
さて今回は精神障害者の話=お付き合いのある精神科のデイケ
アでの話をしよう。そのデイケアとは、心に問題を抱えた人達が平
日の昼間に通い、病気について学習したり、相談員に相談したり、
仲間同士で話したりスポーツをしたりして、食事も共にして回復を
する場所である。障害者自立支援法の施行で、それまで無料に近
かった利用者自己負担が一割になった。自己負担に上限はある
ものの、デイケアまでの交通費を考えれば収入のない若しくは少
ない精神病患者にとっては大きな支出増である。案の定、毎日の
ように通っていた患者さんは、それまでのようには来なくなったとい
う。法の趣旨としては、通わなくなった分は地域社会で過ごして、
社会復帰を目指しなさいと言うことだろう。
しかし、今年も自殺者予想が3万人を越し増加傾向にあるこの国
で、このような政策がよいとは思えない。確かに精神科の患者さん
に、その障害の性質上、意志をまとめて行政に反映させるのは難
しいかもしれない。だが、声にならない声に耳を傾ける必要を感じ
た。
障害者自立支援法が廃止になっても、これからの課題は多いだろ
う。しかし、民主党が政権をとってつくづく良かったなと思った出来
事だった。