がおり、検査の結果、重篤な病気であった。そうでなくとも、便秘や下痢 は、本人だけでなく介護する側にも困難なので改善したいわけである。 高齢者や精神薬等の薬を服用している場合は、便秘になりがちなので下 剤を定期的に服用することが多い。出来れば便の状態に合わせた服薬が 望ましいので、排便の記録をとり、服薬を調整している。しかし、下痢でも 便秘でもなく、理想的な排便を毎日望むのは下剤だけに頼った排便管理 では難しいと思った。排便の問題だけでなく、腸内環境を整えることが栄 養の吸収に重要なことは知っていたが、私の経験ではうまく行っていなか ったのが現状だった。 そこで、腸内環境や便の状態を左右する食物繊維の見直しをすることにし た。今までは、嚥下問題や水分補給のために、酵素入り手作り寒天ゼリ ーを食事に付けるようにしていたが、それでは不十分のようでもあった。そ んな折、ある医師から「オールブランを使用すると、便の状態が改善します よ、しかし結構金額がかかるので。」とのアドバイスをいただいた。オール ブランは小麦の皮から作られた食物繊維である。食物繊維の中でもオー ルブランは非水溶性、また当社がゼリーに使う寒天は水溶性であることが わかった。「排便の改善には、非水溶性の食物繊維も必要なのか?」で は、なんとか非水溶性の食物繊維を安価に手間なく食事に取り入れること はできないかと調べてみることにした。現代の調理は、材料の食べやすい ところや、見栄えのよいところだけを利用し、皮や硬い部分を取って調理し てしまう傾向がある。皮や硬い部分には非水溶性の食物繊維が豊富なの に、それを捨ててしまうのだから食物繊維不足になるのは当然といえる。 しかし、皮や硬い部分を利用すると言っても限度がある。やはり嚥下対応 食やミキサー食には、何らかの食物繊維を追加する必要があるようだ。そ こで、たどり着いたのがマッシュポテトだった。業務用ならマッシュポテトは 安価であるし、食べ物に水分と粘度を必要とする場合にも手軽に利用でき る。それに、魚臭さを和らげる効果があることもわかった。早速ミキサー食 に取り入れてみることにした。 利用者さんはここ数年、嚥下状態が悪く水分にもトロミを付けている。便は 良いときもあるが、軟便が続いたかと思うと、硬い丸い便が肛門を塞いで しまうこともある状態であった。肛門が塞がれば便秘になるので下剤を使 う。下剤が効き軟便となる。この状態の繰り返しで、ご本人にとっても介護 する側にとっても困難なこととなっていた。もし、マッシュポテトによって便 の保水能力が上がれば腸内環境の改善も期待できる。結果は、すぐ現れ た。食べたもので便の状態が変わることは、当たり前のこととは思ってい たが嬉しかった。戦中戦後は米が不足していて、イモ類や豆類を食べるこ とが多かったので便秘も少なかったのだろうか?米があまりある時代にな り、小麦も食物繊維豊富な表皮を取り除いた小麦粉食品を豊富に食べる 時代になった。野菜も皮や硬い部分を取り除き料理をするのが当たり前 のようである。もう50年前になるが、私の子供の頃は野菜の皮をむくこと は、土のついたイモ類以外では、考えられなかった。ピュ−ラーで人参の 皮をむくのをテレビで見て驚いた覚えがある。そんな時、私の料理の先生 であった祖母は、「野菜は皮のところに栄養があるのに」と嘆いていた。野 菜の皮や硬いところを取り除いて食べて、便秘になれば、食物繊維入りの 薬?を買って飲んでいるわけだから、滑稽と言えないだろうか?とりあえ ず、マッシュポテトで排便の状態が少しでも改善されたのは嬉しかったの で、報告することにした。 話は変わるが、今年の夏は猛暑であった。そうは言っても高齢者の居室 をクーラーでそんなに冷やすわけにはいかない。せいぜい27度か28度位 の設定になるだろう。中には冷房嫌いの利用者さんもみえる。クーラーで 室温が28度だとしても、外気温が38度で晴天なら壁などは熱くなっている し、直射日光の照り返しも、じっとしている高齢者に影響を与える。だか ら、少なからず汗をかくことになる。尿も汗も体から水分を排出するのは同 じだ。尿は腎臓で作られるので、血液の組成をある程度保ちながら不要な 水分等を尿として排出している。しかし尿と違って腎臓を経由しない汗は、 塩分を始めとしたミネラルやビタミンも排出してしまう。だから、スポーツド リンクが必要と言う話になるが、三食のうち何回かは味噌汁やスープを飲 み、おかずも好き嫌いを言わずに食べていれば、スポーツドリンクのお世 話にならなくても済むような気がしている。病気によっては、摂ってはいけ ない成分はあるが、通常ならば色々な食品を体に必要な分以上に体に取 り入れて、不必要な分は体が勝手に排出していくので体は一定に保たれ ている。特にこの猛暑の中、体の中では絶対に生産されない塩分を始め としたミネラルやビタミンの重要性を改めて感じた次第である。 |