連載 D アルミニュームと水素

連載「食事とホームヘルパー」D 
アルミニュームと水素
私は、早朝から台所に立ち、ラジオを聴きながら配食の調理をしている。
いつも聴く番組では健康や環境の話題がよく取り上げられる。その中の
二つの話題を紹介する。
一つ目は、乳児や幼児が毎日ホットケーキを食べると、過剰なアルミニ
ウム摂取になる話題だ。ホットケーキ材料の重曹にアルミニウムが含ま
れていて、毎日食べるとそれが計算上体重の少ない子供には過剰にな
ると言う。以前からアルミニウムには、脳に入ってしまうとアルツハイマー
病の原因になると言う説があるので、当社ではアルミニウムの鍋をなる
べく使わないようにしていたが、まさか重曹の中にアルミニウムとは驚い
た。
二つ目の話題は、パンなどに使われているマーガリンやショートニングが
恐いと言う話だ。マーガリンやショートニングは、常温で液体の油を化学
的処理して、常温でも固形状になる油を原料にしている。油は水素と炭
素がいくつも結合してできている。その水素と炭素の配列や数を調整す
るとその油の性質が変化すると言うわけだ。その時の話しでは、仮に固
まりにくくした油が血管に入った場合、常温でも固まってしまうので、血管
が詰まる可能性があるとの事だった。
そんな折、カロリーの摂りすぎが気になる方にお勧め、健康志向の食用
油に発がん性の恐れがあるので、販売を止めるとのニュースが流れた。
この油は、摂取しても吸収しにくく出来ているとのことで、やし油の分子配
列から水素を化学的に調整していたものだと言う。
思い起こせば、1960年台から70年にかけて公害や食品汚染が大きな
問題となった。特に1974年〜75年新聞に連載され後に単行本となった
有吉佐和子氏の「複合汚染」は大きな話題となった。内容は@農薬と化
学肥料の生態系や人体に及ぼす悪影響、A合成洗剤の生態系や人体
に及ぼす悪影響、B合成保存料、着色料など食品添加物の危険性、C
自動車の排出ガスに含まれる窒素酸化物の危険性、この他に化学産業
と軍需産業の関連についても書かれていたと思う。当時は毎週のように
発がん性物質が公表され使用が禁止になったり、各種の食品添加物に
危険性があるとされ使用が制限されたり、使用禁止になった。大気や水
質の規制が強化されたりもした。反対に体によいとされる食べ物が話題
となり品不足になったりしたのもこの頃からだろうか。また、危険な食品
の追放や環境問題に対する市民運動も盛んになった。結果、その分は
食品の安全性や環境の悪化は防ぐことが出来たと思う。
しかし、使用された食品添加物の危険性、特に発がん性にふれて、現在
の死亡原因第一位が癌になることを予想していた人もいた。何にしても、
食品の製造技術とその安全性にはイタチゴッコのようなところがある。農
産物の栽培技術や食品の製造技術は、更に便利で、より美味しく安価に
と言った具合に、人間の欲望に任せて開発と実用が行なわれている。利
益の上がる技術や化学には多くの投資が集まり、世の中にその製造技
術を使った製品が出回るだろう。それに対してその危険性が指摘される
こともあるだろう。しかし、現代生活の中ではそれら危険を指摘された製
品や食品を完全に排除して生活することは出来ない。たとえ危険な食品
を自宅の台所から排除したとしても、加工食品はどうか?外食ではどう
か?ましてや大気や水といった環境は、おいそれと変えられないからで
ある。
さて、話をアルミニウムと食用油の水素調整に戻そう。まずアルミニウム
である。アルミニウムを人類が金属製品として利用し始めたのは、百数
十年前と言う事である。自然界では他の物質と化合していて、極微量で
しか存在しない。だから人体の中にも通常は、極微量しかないわけであ
る。これは、猛毒のヒ素にもいえる事で、極微量は人体にとって必要なも
のでもある。しかし、アルミニウムを単独で抽出し、高い濃度で毎日摂取
することになれば過剰に体内に入り危険性があるということだ。食用油も
科学的に水素分子を調整して、その性質を変えたとすればもはやそれ
は今までの油とは異質の物であり危険かもしれないと言う事だ。私たち
は食べ物を前にした時、見た目、臭い、感触、味などの感覚で、それが
食べられるかどうかを判断し口に運ぶ。胃腸などの消化器で血液に吸収
できるように消化し、出来ない物や不必要な物は便として排出する。腸壁
など食べた物から血液に必要な物を取り込む役目のある物は、不必要
な物体にとって危険な物は血液に入れない。その能力が限界となれば下
痢と言う緊急避難策で急激に危険回避をする。それでも血液に入ってき
た毒性には肝臓を始めとした臓器が解毒をする。しかし、体が未知の物
質に関しては、腸壁や肝臓はどのように反応するかはわからないのであ
る。もう一つ、たとえ血液に未知なる物質が入ったとしても、人間には体
と脳の間に血液脳関門(けつえきのうかんもん)と言う関所があって、より
厳密に脳に不必要なものや脳に害のあるものは通過させないようにして
いる。しかし、その血液脳関門さえも未知なる物質やアルミニウムのよう
に今までより量が増えそうな物質にはどう反応するかは不明であろう。
私たちホームヘルパーは、食事で利用者さんの健康を守るプロでもあり
たいと思う。それに少しでも近づけるように日々研鑽したい。