缶詰の話

缶詰の話
ここ数ヶ月の間に、99や100円ショップに並ぶ缶詰の種類や量が
増えたようである。おかずにするのか、酒の肴なのか、よく見てい
ると結構売れている。たとえば味付けの魚缶にしても、この年にな
ると一缶開ければ二食分はあるので、懐が寂しければ重宝する。
毎週ある資源ごみ収集では、ビールやチューハイの空き缶が目に
付くが、最近は惣菜の空き缶も増えているように思う。
私の子供の頃は、よく缶詰を食べた。「味付けマグロのフレーク」
「サバの水煮」「サンマの蒲焼」なにしろ安いので、毎日の弁当のお
かずにもよく登場した。缶詰は日持ちがして、開ければすぐに食べ
られるのもよかった。サバの水煮も醤油をかければOKだったが、
毎日続くと味が同じなのでわびしさも感じた。惣菜缶詰の種類は、
魚缶が多かった。魚は季節によっては大量に獲れて過剰になるか
ら、缶詰することが多かったようだ。だから主だった漁港の近くには
必ず缶詰工場があった。しかし、冷凍技術がよくなったので、冷凍
食品にその座を奪われたのだろう。それに缶きり不要、ごみも少な
いレトルト食品にも押されて、このところは生産量も少なかった缶
詰だが、やはり常温で長期保存ができ、安価なことは群を抜いてい
る。
缶詰と言うと、フルーツの缶詰も見逃せない。昔、当家ではバナナ
や卵と並んで桃缶が贅沢品の部類に入っていた。父母と兄弟合わ
せて6人でミカン1缶を分け合ったこともあった。汁だけでも美味し
かったが、少し缶の味がしていた。(今は金属の融出を防ぐため缶
にコーティングがされているので缶の味がすることは少ない)甘い
だけで贅沢であった時代のことである。桃やミカンも生産が過剰な
時に缶詰にされたのだろうが、今は輸入品が多いから、円高など
で実に安い。
さて、ここへ来てなぜ缶詰に人気が出てきたか?やはり安いからだ
ろう。冷凍食品に比べても手間もかからず、なにしろ安い。それに
一人暮らしの人が多くなって「一人分の料理を作るのは面倒くさい」
のだ。うまく使えばコンビニ弁当の半額で一食済ませることが出来
るかもしれない。ましてや外食に比べればその費用は数分の一だ
ろう。だから缶詰は、昔から一人暮らしの必須アイテムの一つだっ
たのかもしれない。
しかし、魚缶に自炊のご飯、インスタント味噌汁に漬物で、食事を
済ませるとするなら、安価とはいえ野菜が不足だろう。それに高齢
になれば不足分を補う機能が衰え、各種の栄養素を万遍なく摂る
必要があると言う。職業柄そのあたりが気になる今日この頃だ。