「介護職員への経管栄養などの解禁」

「介護職員への経管栄養などの解禁」
賛成?それとも反対?
またまた、厚労省の検討会で介護職員に胃ろうなど経管栄養や吸引の
医療行為を解禁することが論議されているという。在宅では、吸引は医
療との連携などを条件に一部解禁されていたが、胃ろうについては準
備や片付けなどの補助に留まっていた。一般的に入院中に嚥下が困
難とされると、窒息や誤嚥性肺炎の危険を理由に胃ろう造設手術が勧
められる場合が多い。特に忙しい病院では時間の掛かる食事介助や
嚥下訓練は困難なため、帰宅後の安全も考えての話だろう。
今から十年近く前のことだが、そのような病院の胃ろう造設手術の勧め
を断って、利用者さんが退院してきたことがある。すぐに私たちが介護
にあたったが、その頃の私たちには食事介助や誤嚥防止食の調理
法、嚥下訓練の知識や経験もなかったので苦労した。それでも、文献を
読んだり経験者に御指導いただいたりして、数年介護をさせていただい
た事がある。
もし今回の検討内容により、法や規則が改定され在宅でも胃ろうによる
介護が介護職にも解禁されたら、看護職より半額程の時給で訪問でき
る介護職に胃ろうを任せることが出来るのだから、胃ろう造設手術は増
えるだろう。それに加え最近は24時間点滴に移行する患者さんも増え
てきた。  
これは高カロリーの点滴を静脈に絶え間なく点滴する技術で、これには
介護職が係わる余地はないと考えている。普通に人間が栄養をとる場
合、食べる物を目や鼻で認識し、口で味や食感を感じ取り、唾液に混
ぜて飲み込む。それを胃腸で消化して、必要な分を血液に取り込み不
要な物は便として排泄するわけだ。胃ろうは、口や唾液の作用を省いて
直接胃に栄養を入れる。24時間点滴はそれに加え胃腸の作用も省い
て、直接血液に栄養を与えて生命を保持しようと言う技術だ。胃ろうや
24時間点滴で命を救われることは多いだろうし、それらは現代医学の
到達点に違いない。しかし、それらの措置によって省かれた口や胃腸
は栄養を血液に入れるためだけにあるのではないので、そこが気がか
りになっている。例えば口は、この他の作用として呼吸や発語に使われ
ているし、胃腸は血液に栄養を加えるだけでなく、血液中にある不要な
物を便の側に出す作用もあるとの話も聞く。口は食事、呼吸、発語、胃
腸は消化、吸収、排泄、その他消化液やホルモンの分泌など未だに未
発見で重要な作用をしていると考えて間違いはないだろう。それらの臓
器の複数の作用は、相互に関係しあって働いていると思う。
話しを戻そう。私はどうであれ、ホームヘルパーの仕事として胃ろうが
加えられれば、それにしっかり取り組む覚悟はある。しかしその前に、
訪問介護が食事介助や誤嚥防止食の調理法、嚥下訓練に真剣に取り
組んできたかと言う疑問がある。たしかに嚥下障害のある利用者さん
の食事介助は難しいし、窒息や誤嚥性肺炎の危険もあるので、訪問介
護に携わる全ての者が取り組むのは難しいだろう。しかし、嚥下障害→
胃ろう又は24時間点滴に移行の図式となるのは悲しいと思う。
私は、食事介助をしている人が胃ろうになったケースをあまり知らない
ので具体的にはその比較は出来ないが、胃ろうになって発語が減った
との話しは聞く。それは、食事で口と言う器管を使わなくなったことが関
係しているだけではなく、食事をすると言う行為や刺激を利用者さんが
受けることがなくなったことも関係していると思う。それに理屈では、胃
ろうから注入するものは、口で噛んで飲み込める状態になった物なら可
能なわけだが、実際には毎回ラコールのような出来合いのものを注入
するのがほとんどと聞く。衛生面を考えれば仕方のないことだと思う。
しかし私のように、利用者さんの栄養状態が極度に悪ければ玄米を取
り入れ、床ずれの心配があれば魚の煮こごりを加え、便の状態が悪け
れば食物繊維を加えるといった工夫をするホームヘルパーにとっては、
胃ろうはやりがいの少ない仕事のような気もする。だから今回の検討会
の報告には賛成も反対も出来ずにいる。
食事介助等については、下のホームページに書いたのでよければ参考
にしてください。
ノーマライゼーション研究会(http://www.geocities.jp/let2361/)