飲み込む機能は根底的 先回は、昨年母が胃ろうを薦められたのをお断りして、自宅に戻り側臥位で経口摂取している事をお話しました。今回は胃ろうをお断りした理由や経過を書きたいと思います。 一般に食べる機能とは、 @
目で見て食べ物と判断する A
口に運ぶ B
咀嚼してドロドロにする C
それを一旦口内の両側ポケットに集めてから舌の奥に食塊としてまとめる D
口を閉じ気道を閉じ、食塊に圧力をかけて食道に飲み込む に分けられます。 普通に食べられない場合はこの一連の作業を介助することになるわけですが、目で見て口まで運ぶ機能は介助者が肩代わり出来ます。食物をドロドロにするのは、ミキサーをかければこと足ります。舌やホッペタで舌の奥にドロドロの食物を集めて食塊を作ることは介助者の技術を要しますが、スプーンや注射器の工夫で大体は出来ます。 結局、嚥下障害のある御本人がどうしても自分でしなくてはならないのは、Dの「口を閉じ気道を閉じ、食塊に圧力をかけて食道に飲み込む。」ことになります。 だから、胃ろうを薦められてそれに同意するか、しないかの判断は私の場合次のようになったわけです。 @ 口を閉じることができるか? A 舌は麻痺していないで、ある程度は動くか? B 気道を塞いで飲み込めるか?(唾液を呑み込めるか) 以上3点を確かめれば、経口摂取の可能性があると判断出来ると思うのです。 母の場合、単語を話すことが出来たので舌の完全な麻痺はないと判断しました。また唾液を飲み込めたので、舌の奥に食塊を運べば飲み込めると判断しました。 他には仰向けに寝て、ベッドで背上げした形で、ラッパ飲みのように食道に流し込む方法があるようですが、ラッパ飲みは普通に飲み込むこととは違い、タイミングのズレで窒息の危険があります。だからラッパ飲みは諦めました。車椅子もラッパ飲みもあきらめ、私は最後に右横向きに寝た姿勢=右側臥位での食事介助だけが経口摂取の手段だと結論づけました。 なぜ側臥位でも左ではなく右を下にした側臥位なのかと言えば、人間の胃が左側から右側に下がる形で付いているからです。右側臥位で胃に食物を入れようとすると、重力により食べ物は胃の奥に下がっていくことになりますから食べ物の逆流も防げるわけです。しかし、人間は横向きに寝ての食事や飲水は通常しませんので、訓練が必要でした。 また、食事の時、むせたり誤嚥したりした経験のある人は、慣れていない寝たままの食事を怖がります。だから、比較的簡単なクラッシュゼリーで訓練しました。ここで最後の問題は、横向きで寝ている母の口の中、それも舌の奥の方にどうやってスムーズに食物を運び入れるかです。スプーンでは口に入れる段階で食物がこぼれてしまいます。そこで、注射器を使用することにしました。 次に胃ろうでの食事と側臥位での食事との比較です。まず食事の所要時間ですが、胃ろうで仮に点滴のような注入であれば、注入だけで相当の時間を要します。経口摂取では胃ろうの点滴様の注入のようにその場を離れることは出来ませんが、リズムよく比較的短時間で済ませることが出来ます。当社ホームページの動画をご覧いただければわかると思います。 次に胃ろう注入でも、点滴様でなく注射器によるトロミをつけた食品の注入なら必要に応じて様々な食品が取れるわけですが、私の見たところでは、医療保険の栄養注入液のみが主流のようです。これでは、食物繊維や微量要素は足りないのではないかと言う感想を私は持っています。 特に寝たきりに近い方の場合は、皮膚や軟骨の原料と雄なる魚や肉のコラーゲン等、腸内環境を整え排便を即する食物繊維は欠かせないと思っています。 側臥位での食事ではミキサーすれば何でも食べることが出来るため、利用者さんの状況に合わせた食事内容が選択できます。 その他、口腔内の清潔は胃ろうでも側臥位の経口摂取でも重要です。どちらにしても口の中が不潔で不潔な唾液などが気道に入ってしまえば、肺炎の恐れがあります。 また、人間はその機能を使わないようになれば、その機能は衰えます。胃ろうのように食事で嚥下機能を使わないようになれば、嚥下機能はより衰えるわけです。側臥位での経口摂取で嚥下機能が少しでも保たれていれば、その他の時も唾液を食道に呑み込む可能性が増えるのではないでしょうか? シリンジによる食事介助のホームページへ 有限会社レッイビーのホームページトップへ http://www.letitbe.jp/ |